解体工事を行うと、大量のゴミが発生することになります。

今まで家を支えていた柱も雨から住居内を守っていた屋根も、壊されてしまえばそれはただの「ゴミ」へと変わっていきます。

家一軒を解体した際に発生するゴミは、普段の生活で出る家庭ゴミとは規模が大きく異なります。

ゴミはきちんとした工程で処分される必要がありますし、できるものはリサイクルして環境保全に貢献する必要もあります。

実際に解体工事で発生した廃材などは、どのように処分されているのでしょうか。

今回は、解体作業後の廃棄物の行方について見ていきましょう。

解体工事が生み出す廃材について

解体工事で発生するゴミは、産業廃棄物と呼ばれています。

廃棄物という言葉をよく耳にしますが、大きく一般廃棄物と産業廃棄物の2つに分類することができます。

一般廃棄物

廃棄物処理法で定められている産業廃棄物以外のものは、一般廃棄物に分類されます。

例えばご家庭で日常的に排出される、紙くずや残飯、野菜の切れ端、段ボールなどのゴミは家庭廃棄物と呼ばれており、一般廃棄物に含まれます。

同様に、一般的な事務所での事務仕事などの際に排出される紙くずなど、レストランなどから出る残飯などは事務系一般廃棄物と呼ばれています。

産業廃棄物

事業活動などによって発生した廃棄物の中でも、廃棄物処理法によって定められた20種類の廃棄物のことを指します。

例えば金属くずや木くず、瓦礫や、ガラス、コンクリートのくず、などは解体工事という事業活動によって発生しやすい産業廃棄物と言えます。

また、アスベストが使われている住宅の解体をする場合は、その解体工事から出たアスベストを特定有害産業廃棄物として処分することになります。

廃棄物取り扱いの許可

実は、廃棄物を取り扱うにはきちんとした許可が必要になってきます。

厄介なのは、一般廃棄物の取り扱いには一般廃棄物の許可が必要になりますし、一方の産業廃棄物の取り扱いには産業廃棄物の許可が必要になってくるという点です。

仮に産業廃棄物を取り扱う許可を保持していたとしても、一般廃棄物を取り扱うことができないのです。

例えば、一般廃棄物の許可を持っているから産業廃棄物を取り扱うことができると謳っているような悪徳業者も存在するため、業者を選ぶ際には注意が必要になってきます。

廃材の処分方法

例えば鉄筋コンクリートの建物を解体した際には、鉄とコンクリートしか出てこないというわけではありません。

ガラスや石膏、木くずなどなど、解体工事によって様々な種類の廃棄物が排出されることになります。

廃棄物の分別

一軒の家を解体する際には、色々なタイプのゴミが発生します。

解体工事では、基本的に解体作業をしつつ様々な廃棄物を分類していくことになります。

以前は、わざわざゴミを分別するという必要がなかったため、豪快に解体して一緒に処分していました。

しかし、建設リサイクル法によって分別解体が義務付けられるようになったため、解体をしつつ分別もしなければならなくなったのです。

当然、解体作業の手間や時間が、より必要になったため、その分解体費用も高くなりましたが、今後の環境を守っていくことを考えると不可欠な措置だといえるでしょう。

解体工事現場で分別された廃棄物は、処分場へと運ばれることになります。

廃棄物の処分場とは

最終処分場は、所要量の廃棄物を安全に処分できる構造物のことになり、地下水汚染や飛散、ガスの発生、汚水の流出などを防止します。

処分場はその処理方法によって、安定型最終処分場、遮断型最終処分場、管理型最終処分場の3つに分類することができます。

安定型最終処分場

この処分場には、有害物質や有機物質が付着していない廃棄物が運ばれてきます。

例えばゴムくずや廃プラスチック、ガラスくず、金属くずなど、雨にぬれてもほとんど変化することのない安定型の廃棄物が処分されます。

遮断型最終処分場

こちらには、有害な鉱さい、汚泥、ばいじんなどをはじめとする、有害な産業廃棄物が処分されます。

この処分場は、自然を廃棄物に含まれる有害物質から隔離するために、雨水流入防止のための措置が施されています。

管理型最終処分場

こちらには、遮断型最終処分場でのみ処分できる産業廃棄物以外のものが運ばれてきて埋め立て処分されることになります。

木くずや紙くず、動物の死体をはじめ、様々なものが埋め立てられますが、有機物の分解や金属類の溶出で発生する有害物質の流出を防ぐための構造になっています。

廃材のリサイクル方法

解体作業で排出された廃材は、すべて廃棄物として処分されるわけではありません。

利用できるものは、リサイクルに回されて様々な場所に役立てられています。

コンクリートくず

一般の住宅の基礎部分等に利用されるコンクリートは、解体後にほぼリサイクルされています。

細かく砕かれて道路工事の基礎材として利用されることも多いですし、砕いたコンクリートを圧縮してレンガとして使われることもあります。

木くず

木材は、住宅の柱や梁等に利用されていますが、解体された後はその大部分がリサイクルとして利用されます。

例えば木くずを細かく砕いてパーティクルボードとして利用したり、薬品で煮ることでパルプ加工することもできます。

さらに、ペレットストーブの燃料になったりバイオエタノールの材料になったりと、様々な使い道ができるのが木くずの特徴です。

ガラスくず

ガラスくずは、一般家庭の窓や鏡などを解体した際に発生します。

細かく砕いたガラスを高温で溶かすことによって、再生ビンなど、ガラスの原料として利用することができます。

また、中にはブロックやタイルなどの建材の原料として活用するケースもあります。

金属くず

例えば鉄筋コンクリートづくりの建物を解体する場合は、鉄筋をはじめとする数多くの金属くずが排出されます。

基本的には金属くずのほとんどが、同じ鉄骨製品としてリサイクルされることになります。

また、高温で溶かして不純物を排除することによって、鉄やアルミニウム、レアメタル、マグネシウムなど、細かい金属を回収することもできます。

プラスチック

浴槽や洗面台、キッチンをはじめ、家庭内では様々な部分にプラスチックが利用されています。

それらが解体されて発生した廃プラスチックは、溶かして再度新しいプラスチックを作る原料として使われることも多いです。

また、繊維くずや紙くずと混ぜ合わせることでRPFと呼ばれる固形燃料を生成したり、フリースをはじめとする衣類やプラスチックの成形品としての需要が高いです。

紙くず

住宅では、壁紙やふすまに使われている紙などが紙くずとしてリサイクルされます。

紙は再生紙として使われることも多いですし、段ボールなども再利用されます。

その他に、廃プラスチックと混ぜ合わせることで固形燃料の材料として使われたり、薬品を混ぜて繊維を取り出すことでパルプとして活用されることもあります。

繊維くず

絨毯やカーテンをはじめとする繊維は、解体後に繊維くずとしてリサイクルに回されることになります。

その繊維くずが化学繊維の場合は、再び繊維としてリサイクルすることもできますし、プラスチックの材料として活用されることもあります。

また、廃プラスチックなどと混ぜ合わせて圧縮することによって、固形燃料が出来上がります。

石膏

石膏は、住宅の内壁や天井などに石膏ボードとして利用されています。

細かく砕いて作り直すことによって、同じ石膏ボードの原料としてリサイクルされることも多いですが、骨材と混ぜてセメントの原料としても使われます。

また、水と組み合わせると固まる性質があることから、土壌を改良するためにも用いられます。

廃材の不法投棄

解体業者の中には、工事で発生した産業廃棄物をリサイクルや処理場に回すことなく、不法投棄する悪質なところも存在します。

産業廃棄物として処理する場合は多額の費用がかかるため、工事コストを削減するために不法投棄をするのですが、本来はあってはならないことです。

不法投棄の現状

不法投棄とは、法律を無視して山や原野などの人目の付かないところに産業廃棄物を放置する行為のことになります。

もちろん都会のど真ん中に大量の産業廃棄物を不法投棄するような業者はないでしょうが、地域によっては不法投棄が深刻な問題となっているところもあります。

不法投棄された産業廃棄物から有害物質が漏れてしまうと、環境破壊が発生して周辺の住民の健康にリスクが発生する可能性もありますし、その地域の農作物にも大きなダメージを与えることになります。

不法投棄に対する様々な罰則や取り組みがあるのにもかかわらず、毎年何トンもの産業廃棄物が勝手に捨てられているのが現状です。

業者の不法投棄の責任は施主に?

解体工事を依頼した業者が不法投棄を行った場合、その責任は解体業者だけにとどまらず施主も罰せられるという話を聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。

例えば、不法投棄をする業者だということがわかっているのにもかかわらず、その業者に解体作業をお願いした場合は、施主も罰せられる可能性があります。

しかし、通常は業者が不法投棄するかどうかということなどわからないというケースがほとんどですので、解体業者が勝手に行ったことだということで施主が罰せられるようなことはありません。

ただし、ご自身の住宅を解体した際に出た廃棄物が不法投棄されているというのは気分が良いものではありませんので、やはりきちんと処分してくれる業者に解体工事を依頼するべきです。

信頼できる業者にお願いするために

産業廃棄物の処分にはお金がかかりますので、解体工事であまりにも安い料金を提示してくる業者には注意する必要があります。

不法投棄すれば廃棄物処分のコストがかからないため、見積もりも安くできるわけです。

また、産業廃棄物の処理がきちんと行われたかどうか確認するためのマニフェストと呼ばれる書類の作成が必要になってくるため、業者にそのマニフェスト伝票を見せてもらうようにしましょう。

見せられないと拒否するような業者は怪しいと判断することもできるので、それを基準にして業者を決めるのもよいでしょう。

マニフェストとは?産業廃棄物管理票の見方と管理方法について

最後に

建物が解体された後に排出された廃棄物は、処分やリサイクルなど、様々な方面に分かれることになります。

きちんと処分されるのであれば全く問題ないのですが、不法投棄をする業者は後を絶ちません。

無事に解体してくれるのであればそれで問題ないとお考えの方も多いでしょうが、施主一人一人がきちんとした業者を選ぶことによって環境が守られていきます。

産業廃棄物の処理の仕組みを知ったところで、きちんと処分してくれる業者をうまく見つけるようにしましょう。