不動産の売却をキャンセルする際に注意したい違約金や仲介手数料の支払い

当初は家やマンションを売却するつもりで売却活動を始めたとしても、何らかの理由によって事情が変わり、売却したくなくなるというケースも存在します。

つまり、一切の売却活動をやめて対象となっている物件を売らないということですが、当然売買契約が成立するまでは売り手が所有者になるため、キャンセルは可能です。

ただし、そのキャンセルのタイミングによっては、ペナルティとして大金を支払わなければならない可能性も出てきます

また、実費はかからないにしても、それまで売却活動をサポートしてくれた不動産会社や、買う気になっていた買い手に大きな迷惑をかけることになります。

それでは、売却をキャンセルすることによって、具体的にどのようなペナルティが発生するのでしょうか。

今回は、不動産の売却をキャンセルするタイミングによって発生の可能性がある、罰則や仲介手数料の支払いなどを紹介させていただきます。

不動産売却のキャンセルはタイミングで状況が異なる

売却活動といっても

  • 始めたばかりで不動産会社を選んでいる段階
  • 購入希望者が決まり売買契約を結んだ後の段階

では、状況が大きく異なります。

結論から言うと、どの段階であっても売却活動をキャンセルして白紙に戻すということは可能です。

しかしそのタイミングによって迷惑の度合いが異なりますし、それに応じてペナルティとなる罰金を支払う可能性が出てきます。

ここでいう売却活動のタイミングは、大きく

  • 不動産の査定後
  • 媒介契約を結んだ後
  • 購入の申し込みをもらった後
  • 売買契約を結んだ後

の4つに分類することができます。

それぞれのタイミングでキャンセルした場合について見ていきましょう。

査定後のキャンセル

売却活動をスムーズに行うためには、初めに不動産会社を選んで媒介契約を結ぶことになりますが、その不動産会社を選ぶために物件の査定をしてもらいます。

査定は大きく

  • 簡易査定(築年数やエリア、間取りなどの情報を元に机上で査定額を出す)
  • 訪問査定(対象となる不動産まで足を運んでもらいしっかりとした査定額を出す)

の2つに分けることができます。

簡易査定はともかく、実際に交通費などが発生している訪問査定を利用した後でキャンセルをすると、お金がかかりそうなイメージもあります。

しかし、基本的には査定をしてもらっただけでお金が発生することはないはずです。

例えば、不動産会社の中には査定で出張費をもらうというようなところも存在しますが、出張費や手間賃については査定前に確認しておけば問題ありません。

そもそも、一般的には複数の不動産会社に査定をお願いし、最終的にそのうちの1社に絞ることになります

査定の度に出張費を払うということになると、最終的に選んだ会社以外の不動産会社全てにキャンセル料を支払うことになります。

普通の不動産会社であれば査定は無料ですので、例えば家の価値を知るためだけに査定をしてもらい売却活動は行わないということも可能です。

媒介契約を結んだ後のキャンセル

複数の不動産会社に査定額を出してもらい、信頼できそうな会社に出会うことができたら、一般的にはそこと媒介契約を結ぶことになります。

媒介契約には

  • 専任媒介契約
  • 専属専任媒介契約
  • 一般契約

がありますが、詳しくは「家を売却する際に必要な媒介契約の種類とそれぞれの特徴を徹底比較!」を参照ください。

売り手は媒介契約を結んだ不動産会社に、対象となる家やマンションなどの売却をお願いするのが一般的です。

そしてその依頼を受けた不動産会社は、売却活動を始めるにあたって必要な広告を準備したり、売却の計画などを練ることになります。

つまり、契約を結ぶことによって実際に不動産会社の手を煩わせることになるのですが、結論を言うとこの段階であっても通常は問題なくキャンセル可能です。

不動産会社によっては、広告費などの実費が発生している分を請求してこようとするところもありますが、売却自体を完全に止めるのであれば問題ありません。

ただし、他の業者にも契約期間中に契約を解除したという噂が広がる可能性もあるため、利用している不動産会社が嫌だから別の会社に乗り換えるのは考え物です。

一般的に媒介契約は3ヵ月で完了するため、その場合は3ヵ月が経過して契約を延長するかどうかのタイミングで取りやめると、スムーズにキャンセルできるはずです。

購入申し込みを得た後のキャンセル

不動産会社と媒介契約を結んで広告を出していると、内覧希望者が現れ、その中から不動産を購入したいという方が現れます。

記事→「不動産を売却したいのに内覧希望者が来ない4つの理由とそれぞれの対策」

一般的には、購入したいという方には正式に購入をする前に、仮押さえのような目的で購入申し込みの書面をもらうことになるはずです。

書面でもらうだけであり実際に仮押さえのお金をもらうということはないため、例えばその方がやっぱりキャンセルしたいとなった場合、当然その申し込みはなかったことになります。

同様に、こちら側が購入申し込みを受けたとしても、やっぱり売却したくないとなった場合はキャンセルを言いだすことができますし、違約金などが発生することもありません

しかし向こうからすると、せっかくいい物件が見つかって後は売買契約を待つだけだという状況で突然キャンセルされるということになるため、腹を立てる方も多いでしょう。

もちろん諦める方も多いですが、中にはごねたり言いがかりをつけてくるような方もいるかもしれません。

確かに非はこちらにあると考えることもできるため、きちんと対応すべきですが、それでも基本的にペナルティが発生するわけではないため安心しましょう。

売買契約締結後のキャンセル

不動産を売却する最終段階の一歩手前のステップとして、売り手と買い手の間での売買契約の締結が挙げられます。

売買契約を結ぶ前であれば、基本的にはどの段階で売却のキャンセルを行ったとしてもペナルティがつくことはありません。

しかし、売買契約では正式な売買契約書を交わして不動産の売買取引をすることを決定することになるため、契約後の売却キャンセルには責任が伴います。

契約後のキャンセルは手付金の倍の額が相場

売買契約を結ぶ前に、売り手は買い手から手付金として売却価格の10分の1程度の手付金を受け取ることが多いです。

例えば家を2000万円で売却する場合は、購入希望者から200万円を預かることによって、売却活動を一旦ストップすることになります。

売買契約を結んでまだ残金をもらう前の段階で、やっぱり売却したくないとなった場合は、通常はその手付金と同じ額を買い手に支払うことでキャンセルが可能です。

この場合は、預かった200万円と同じ額の200万円を用意し、合計で400万円を買い手に支払うことによってキャンセルができるのです。

売却したいがキャンセルせざるを得ない場合

売り手が一方的なキャンセルをする場合は、上述したように手付金の倍返しをすることで契約の解除が可能です。

しかし、売り手も売却したいと思っているにもかかわらず、例えば対象の物件が地震などで一部が破損したり、滅失してしまった場合はどうなるのでしょうか。

ある程度は不可抗力な部分も多いですが、これは契約前の家の状態とは異なりますし、買い手としても購入したいと思えない状態になっている可能性があります。

例えば、ちょっとしたトラブルであれば簡単に修繕できるかもしれません。

しかし修繕できないとなった場合は、売買契約を結んだ後であったとしても、手付金をそのまま返して契約が白紙に戻されるのが一般的です。

もちろん、この場合は買い手にも売り手にもペナルティがつくことはないはずです。

売買契約書に違約金の記載がある場合はそれに従う

基本的に売買契約書を結んだ後は、その売買契約書に記載された内容に従って話が進められることになります。

そのため、売買契約書に売却のキャンセルのタイミングやその金額が記載されている場合は、その記載通りの違約金をペナルティとして支払わなければなりません。

一般的なものであれば、売り手は買い手に売却代金の2割や3割を違約金として支払えば、売買契約を白紙に戻すことができると記載されているはずです。

そのため、売却価格が2000万円の不動産であれば、買い手に400万円や600万円の違約金を払うことになります。

もちろん分割ではなく、キャンセルと同時に全額をまとめて支払わなければならないため、この段階までくると簡単にキャンセルすることができないということがわかります。

売却キャンセルによって不動産会社に支払う金額

不動産の売却をキャンセルする際には、買い手相手のペナルティだけではなく、仲介してもらう不動産会社に支払うペナルティについても考えなければなりません。

仲介手数料の考え方

売買契約が成立したら、不動産会社に仲介手数料を支払うことになります。

不動産を売却する際の仲介手数料の相場と知って得する6つのポイント

そのため、不動産会社を通して売却活動を行い、その売却をキャンセルした場合、仲介手数料がかかると考える方も少なくありません。

仲介手数料はあくまでも成功報酬

仲介手数料というのは、売買契約を結んだ後に売り手から不動産会社に支払う、売買契約を成功させた報酬を意味します。

そのため、第一に売買契約が成立していない状態で売り手が売却のキャンセルを行ったとしても、仲介手数料が発生することはありません。

つまり、普通であれば媒介契約を結んで売却活動を続けていたとしても、その不動産会社が買い手を見つけられなければ支払う必要のないお金なのです。

仲介手数料を支払うタイミングとは?

一般的には、売買契約を結んだと同時に、売り手は利用した不動産会社に成功報酬として仲介手数料を支払うことが多いです。

ただし、売買契約の契約と引き渡しのタイミングは異なるため、それぞれのタイミングで半分ずつを受け取る不動産会社も少なくありません。

例えば仲介手数料の合計が100万円の場合、売買契約を結んだら50万を渡し、引き渡し時に50万円を支払うことになります。

また、中には売買契約時ではなく、引き渡し時に全額をまとめて受け取るという不動産会社もあるため、媒介契約を結ぶ際に支払いのタイミングを確認しておく必要があります。

仲介手数料を支払った後のキャンセル

結論から言うと、仲介手数料を支払うということは売買契約が成立したということになるため、普通に考えると仲介手数料が戻ってくることはありません

これは、上述したような地震などによって売却したくてもできないような状態になった場合にも当てはまることです。

ただし、引き渡しが完了していない状態では売買契約が成立したとは言えないため、中には支払った仲介手数料を返還する業者も存在します。

仲介手数料が発生しないケース2つのケース

売買契約が成立した時点で仲介手数料を支払うのが基本ですが、場合によってはその後でも仲介手数料が戻ってくることもあります。

それは、

  • 住宅ローン特約による契約解除
  • 買い替え特約による契約解除

の場合です。

これは売り手側のキャンセルというわけではないため、例えこちらが売りたいと思っていても対象の購入希望者に売却できません。

いずれの場合も家やマンションの引き渡しには至らないため、基本的にこれらの場合は支払った仲介手数料が返ってくるはずです。

媒介契約時に確認しておくべき

仲介手数料についての解釈は、不動産会社によって異なることも多く、最終的には最初に不動産会社との間で交わされる媒介契約の内容が基準となります。

その媒介契約の内容に仲介手数料の内容が記載されているはずですので、金額だけではなく様々なケースに関する取扱いについても確認しておきましょう

媒介契約の書面は当然不動産会社によって作られるため、当然不動産会社が有利になるような内容になっていることも少なくありません。

いざキャンセルをするとなったときに不要なペナルティを受けないためにも、契約の前に内容をしっかりと理解しておくことをおすすめいたします。

まとめ

売買契約を結ぶ前であれば、基本的には売り手がペナルティを支払わなければならないということはありません。

一方で、一旦売買契約を結んでしまったら違約金が発生する可能性が高くなるため、キャンセルをする可能性があるのであればできるだけ早い段階で申し出ることをおすすめいたします

しかし、逆にお金さえ払えば、どのタイミングでもキャンセルをすることは可能だと考えることもできます。

場合によっては、引き渡しの直前でやっぱり売却したくないというような状況になるかもしれません。

売買契約が終わり不動産会社や購入者が最後の引き渡しに向けて準備をしていたとしても、ペナルティさえ支払えばその不動産は戻ってくるのです。

もちろん、その際に違約金として支払わなければならないペナルティは決して安いものではありませんし、それ以上に様々な方に大きな迷惑をかけることになります。

事情によってはキャンセルしても仕方がないと思われるケースもあるかもしれませんが、最終段階でのキャンセルは極力控えたほうが良いでしょう。