不動産売買でも利用できるクーリングオフの4つの条件と3つの注意点

中には、「購入するつもりはなかったのに間違えて不動産を買ってしまった」というような方も多くいらっしゃいます。

日常的な買い物とは異なり高額な費用が必要な不動産ですので、誰もが慎重に悩んで選択することになります。

そのため、間違えようなどないはずだと感じる方もいるかもしれませんが、実際に状況によっては予期せぬ不動産の購入が発生することもあるのです。

それでは、不動産を間違えて購入してしまった場合は、どのように対処するべきなのでしょうか。

一般的な商品の中には、クーリングオフと言う契約を解除する制度を持つものも存在します。

この記事では、そんなクーリングオフの中でも、不動産の契約解除について紹介しております。

クーリングオフとは?基本的な内容

クーリングオフとは?基本的な内容

クーリングオフと言う言葉は知っているが、はっきりとした意味や使い方がわからないという方も多いはずです。

最初に、そもそものクーリングオフとはどのようなものなのかを紹介させていただきます。

クーリングオフで契約を解除できる

消費者が何かを購入する際には、基本的にその消費者が自ら考えて判断し、その商品にお金を払うことになります。

例えば日常的なスーパーやコンビニでの買い物は、自分が好きなものをその場で選んで購入します。

しかし、例えば突然自宅に訪問されてしつこい勧誘を受け、冷静に判断できない状態のまま契約を結んで高額な商品を買ってしまうというケースも存在します。

法律的に見ても契約は非常に強い力を持っているため、普通に考えると一度契約したものを簡単に解除するのは難しいです。

しかし契約の解除ができないとなると、ゆっくりと判断できない状態で購入してしまった消費者は損ばかりすることになります。

クーリングオフという制度は、そういった消費者を守るために作られたものになります。

この制度があることによって、買い手はゆっくりと冷静に判断できる期間を作ることができ、落ち着いて契約に関する判断ができるのです。

実際に、クーリングオフを英語表記で記載するとCooking Offなり、「冷静」といった意味合いが込められています。

MEMO

一度契約を締結してしまった後でも、冷静に考えられる期間を設けて一定期間中の契約を撤回することができるというものがクーリングオフです。

不動産の購入とクーリングオフ

クーリングオフは日常生活の様々な場面で利用することができますが、不動産の取引でも使われることがあります。

実際に、冷静な判断ができないまま不動産を購入してしまうというケースも存在するため、宅地建物取引業法にのっとって消費者はクーリングオフを使うことが可能です。

ただし、不動産売買におけるクーリングオフを利用するにはいくつかの条件をクリアしなければならないため、どんな場合でも使えるというわけではありません。

また、クーリングオフには利用できる期間もあるため、その期間を過ぎてからのクーリングオフは認められません。

条件や期間などに関しては、後程詳しく紹介させていただきます。

不動産売買でクーリングオフするための4つの条件

不動産売買でクーリングオフするための4つの条件

それでは続いて、購入してしまった不動産をクーリングオフするための条件を見ていきましょう。

  • 不動産の売り手が宅地建物取引業者であること
  • 宅地建物取引業者の事務所など以外の場所で申し込みされていること
  • その不動産が引渡し前であること、または売買金額の全額が支払われていないこと
  • 宅地建物取引業者が買い手に書面で申込の撤回方法などを告げた日から8日以内であること

基本的には、これらの条件が満たされていないとクーリングオフは使えません。

それでは、それぞれの項目を細かく説明していきます。

不動産の売り手が宅地建物取引業者であること

不動産の売買取引は、個人間で行われるものが最も多く、

→不動産を個人同士で売却するための注意点とメリット・デメリット

実際に一般の方が一般の方から中古のマンションなどを買うということは少なくありません。

一方で、不動産会社などの事業者から不動産を購入するというケースも多いです。

クーリングオフが利用できるのは後者の場合のみで、一般的には売り手が不動産会社などの事業者、買い手が個人の場合の契約になります

個人間のやり取りであったとしても、間に不動産会社を仲介業者として通すことが多いと思います。

しかし、最終的な契約は個人と個人の間で行われるものであり、不動産会社はあくまでもそのサポートをする存在です。

そのため、最も一般的な個人間での不動産取引においてはクーリングオフが使えません。

宅地建物取引業者の事務所など以外の場所で申し込みされていること

クーリングオフを利用するには、その不動産を購入するという申し込みをする場所も重要になってきます。

簡単に言ってしまえば、申し込みをした場所が不動産会社などの事務所などではない場合はクーリングオフが可能です。

反対に、その不動産会社の事務所などで購入の申し込みをした場合は、クーリングオフが適用されない可能性が高いです。

具体的なクーリングオフができない場所としては、

  • 宅地建設取引業者の事務所
  • 事務所ではないが継続して業務を行っている宅地建設取引業者の施設
  • 買い手が自ら設定した事務所以外の場所

などになります。

逆に、クーリングオフができる場所としては

  • 訪問販売による自宅での契約
  • 勤務先
  • 喫茶店やカフェ
  • レストラン

などの冷静な判断ができないと考えられるところが挙げられます。

一般的には、買い手の自宅にて訪問販売のような形で購入の契約を結んだ場合は、クーリングオフを使うことが可能です。

しかし、買い手が自ら契約の場所を自宅に設定した場合はクーリングオフできないため注意が必要です。

MEMO

もし予めクーリングオフを利用することを前提にしているなら契約する場所も頭に入れておくといいでしょう。

その不動産が引渡し前であること、または売買金額の全額が支払われていないこと

引き渡しや料金の支払いに関してクーリングオフができないケースとして、

  • 不動産がすでに引き渡しされている
  • 購入代金が全額支払われている

が挙げられます。

反対に、上記の条件のいずれかが満たされていない場合、どちらかに該当する場合はクーリングオフが可能です。

中には、「購入したらすぐに不動産を引き渡されて既にそこに住んでいる」というようなケースもあるかもしれません。

しかし、一般的に考えると、すでに引き渡しが完了していたとしても、購入代金をすぐに全額振り込むというのは現実的ではありません。

そのため、通常はこちらの条件はクリアできる方が多いはずです。

逆に言えば、すでに引き渡しが完了しており料金を全額支払っている場合はクーリングオフできないので注意しましょう

宅地建物取引業者が買い手に書面で申込の撤回方法などを告げた日から8日以内であること

クーリングオフは、その商品を購入してから8日以内であれば利用できる、と考える方も多いようです。

大まかには間違ってはいないのですが、正確に言うと申し込み以降にクーリングオフの告知をされた日から8日間ということになります。

通常、不動産会社などの業者が買い手に対し、クーリングオフについての告知をしなければならないというような法律はありません。

しかし、その不動産がクーリングオフの対象であるにも関わらず告知をしない場合、実質買い手は永遠にクーリングオフができることになってしまいます。

そのため、一般的には購入時にクーリングオフができるということを告知されるケースが多く、それ故、購入から8日以内という認識が広まっているのです。

MEMO

なお、クーリングオフができると告知された日も含めて8日間であるため注意しましょう。

不動産の購入後の具体的なクーリングオフの方法

不動産の購入後の具体的なクーリングオフの方法

上述した条件にあてはまるのであれば、高額な不動産を購入してしまい後悔しているとしても、クーリングオフをすることが可能です。

しかし、いざクーリングオフができるとなっても、具体的にどのように行えばよいのかわからないという方も多いはずです。

続いて、クーリングオフの具体的な方法を見ていきましょう。

クーリングオフは書面で行う

一般的には、不動産は1,000万円を超える高い買い物であることが多いため、クーリングオフは基本的に内容証明郵便にて行われます。

内容証明郵便とは?

内容証明郵便は「誰が、誰宛に、いつどんな内容の郵便」を送ったのかを郵便局が証明してくれる郵便のこと

法律上は、クーリングオフは書面で行うと規定されているため、内容証明郵便以外の封書葉書、またはFAXなどを利用することもできるようです。

しかし、例えば単純な葉書を送った場合、不動産会社によっては、その葉書が届いていないなどと言ってくる可能性もあります。

実際にその葉書の存在を証明するのは難しいため、その場合はクーリングオフの期限が過ぎてしまい、契約を解除できなくなってしまいます。

そういった類のトラブルを避けるには、やはり内容証明郵便を利用してクーリングオフをすることをおすすめいたします。

口頭でクーリングオフはできる?

いらない不動産を高額で交わされたということで「直接その売り手に口頭でキャンセルを申し出たい」という方もいらっしゃるかもしれません。

もちろん、その事業者がそれに納得してクーリングオフできるとなった場合は、実際にクーリングオフを成立させることも可能です。

しかし、当然口約束だけでは第三者に証明することができませんし、後々言った・言わないの水掛け論に発展する可能性が高いです。

そのため、当たり前のことですが、クーリングオフを認められて解約したという旨を書面として残しておく必要があります

中には、直接話をしに行き、その場で不動産会社がクーリングオフのための解約証書を作ってくれるケースもあります。

しかし、一般的には一度売却して利益となるものを返品されたくないと考えるところが多いため、説得されるケースも少なくありません。

ただし、こちらにクーリングオフの権利があり、きちんとした手続きを取って返品をするのであれば全く問題はありません。

不動産会社の方で書面を用意してくれない場合は、上述したように内容証明郵便を通してクーリングオフ通知書を送付しましょう。

MEMO

不動産に限らず口約束だけでは何も証明するものはない口頭で話す場合は録音機器などを活用することをおすすめします。

不動産売買でクーリングオフを使う際のポイントと注意点

不動産売買でクーリングオフを使う際のポイントと注意点

最後に、不動産のクーリングオフをするにあたってのポイントや注意点を見ていきましょう。

具体的には、

  • ほとんどの不動産取引には利用できない
  • クーリングオフ期間が過ぎてしまったら利用できない
  • クーリングオフが認められた場合は証拠を残す

このようなことに気を付けてください。

ほとんどの不動産取引には利用できない

不動産会社から直接家やマンションなどを購入するという方もいますが、やはり不動産会社を通して個人から購入するという方の方が多いです。

そして個人間での不動産取引についてはクーリングオフの対象外になるため、実質一般的な不動産取引にはクーリングオフが適用されないということになります。

例えば、個人から中古の一戸建てやマンションを、クーリングオフできるからと言う安易な気持ちで購入してしまうと痛い目を見ることになります。

確かに不動産の購入でクーリングオフ制度は存在しますが、すべてに適用されるというわけではないということを覚えておきましょう。

クーリングオフ期間が過ぎてしまったら利用できない

一般的なクーリングオフが購入日から8日間以内しか認められないのと同様に、不動産のクーリングオフ制度が使えるのも8日以内です。

逆に言えば、8日が経過した後に不動産を返品したいと思ったとしても、既に期限が過ぎているためクーリングオフはできません。

1週間もあるからじっくりと考えようというような悠長な気持ちでいると、あっという間に期限が過ぎてしまいます。

相手が書面できちんと確認して初めてクーリングオフが認められるため、本当に返品したいのであれば少しでも早めに行動に移す必要があります。

クーリングオフが認められた場合は証拠を残す

高額な不動産を返品するわけですから、そのやり取りはきちんと書面に残しておく必要があります。

売り手としても、その不動産を売却するためには労力やお金を費やしているため、できるだけ返品させたくないはずです。

適当に話をするだけでは、うやむやにされて結局クーリングオフできないというようなことになりかねません。

きちんと契約を解除するためにも、クーリングオフをするという旨を正式な書面を作成して残しましょう。

MEMO

クーリングオフはいつでも活用できる制度ではないことは覚えておきましょう。

まとめ:クーリングオフは可能だが条件があるので注意しよう

不動産を誤って購入してしてしまったとしても、クーリングオフ制度を利用して契約を解除することが可能です。

しかし、そのクーリングオフを利用するには様々な条件をクリアしなければならないため、したいと思ってもできないケースも多いようです。

確かにクーリングオフは可能ですが、契約を解除できないケースの方が多いため、安易に不動産を購入するのは避けたほうが良いでしょう。

家やマンションをはじめとする不動産は、数千万円単位のお金が動く高い買い物になります。

中には購入後に後悔してしまうような方もいらっしゃいますが、やはり購入前に冷静に判断してから契約を結ぶことをおすすめいたします。