買い手と売り手がそろえば、基本的には家をスムーズに売ることができます。

しかし、売り手と売るための住宅はあるものの、なかなか買い手が見つからないという方が多いのも事実です。

それでは、不動産はどのような流れで販売するのが最も良いのでしょうか。

もちろんその家の状態や置かれている状態などによっても変わってきますが、不動産を売る際の流れというのは大まかには決まっています。

家を売る前に、 まずはその大まかな流れの全体像をつかんでから行動に移すと、案外すんなりと売却に成功したりすることもあるのです

そのため、今回は家を売りたいとなった時から売却完了までのフローを簡単に紹介させていただきます。

1.売却前に取るべき行動

まずはさっさと不動産会社に連絡をして家の価格を査定してもらえばすぐに売れるんじゃないか、と考える方も多いと思います。

しかし、売りたいものの情報を明確にしなければ、不動産会社も査定のしようがありません。

自宅の境界線について

一戸建てを売却するということは、基本的にはその上物が建てられている土地も一緒に売却することが多いです。

しかし、中にはその土地の境界線がはっきりとしていないケースもあり、その状態で不動産会社に査定を頼んでも、査定結果が曖昧になってしまいます。

そのため、まずは売ろうとしている土地がどこからどこまでかをはっきりとさせるために、土地境界画定測量を行う必要があります。

もちろんこれをしなくても土地を売ることは可能ですが、後々面倒なことになってしまう可能性もあるため、売る前にやっておくことをおすすめいたします。

しかし、この測量を経て境界がはっきりとするまでには数か月かかるため、早い段階で依頼しておきましょう。

査定に必要な書類とは?

単純に家と土地を見てもらうだけの査定も可能ですが、通常は査定の制度をより高めるために以下の書類を用意することが望ましいとされています。

  • 対象となる土地と上物の登記簿謄本
  • 不動産の売買契約書
  • 建物の図面や仕様書
  • 土地の境界確認書
  • 不動産の重要事項説明書

これらを用意しなければ、査定の結果が若干曖昧になってしまう可能性もあります。

できるだけきちんと査定してもらいたい場合は、できるだけ書類を集めておきましょう。

建物価格の相場について

不動産会社にも様々なところがありますが、中には査定額をごまかすような悪徳業者も存在します。

売ろうとしている住宅の価格について何の知識もない状態で査定額を伝えられたら、素直にその額で納得してしまう方もいらっしゃるかもしれません。

もちろん、全く同じ立地に建てられている全く同じ造りの住宅は存在しないため、仮に大きさや築年数、劣化具合などが同じ家があったとしても、売却価格が全く同じになるということはあり得ません。

しかし、やはり 似たような家の売却価格を確認することで何となくの相場を把握することができるはずですので、不動産会社に相談する前に近隣の相場を調べておくことをおすすめいたします。

2.査定について

査定と聞くと、実際に建物を見て判断してもらうと考える方が多いです。

そういった査定方法のことを訪問査定と言い、当然実際に見に来てもらった方が査定価格がはっきりとします。

ただ、物件の情報だけを伝えて、おおよその価格を判断してもらう簡易査定というものも存在します。

簡易査定とは家を見てもらわず建物の価格を査定

簡単に言ってしまうと、 実際に売ろうとしている家を見てもらわず建物の価格を査定してもらうという方法です

売却予定の土地の面積、建物の築年数、それから売却エリアなどを伝えることで、大体の相場を確認することが可能です。

不動産会社に求められる情報を伝えるだけで簡単に査定額を聞くことができる気軽な査定方法だと言えますが、当然実際の建物の状態を確認した査定額と大きく変わってしまう可能性もあります。

査定額は正確ではありませんが、大まかな額を早く知りたいという方にはおすすめです。

訪問査定とは実際に見てもらって査定

文字通り、 売却予定の建物を実際に見てもらって査定してもらうという方法になります

不動産会社の担当スタッフが、様々なデータや実際の建物の状態などの詳細まで確認してくれるため、しっかりとした査定価格を出すことが可能です。

もちろん上述した簡易査定と比べると時間がかかりますし面倒だと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、 きちんとした査定価格を出してほしいという方におすすめの方法です

3.不動産会社との契約について

続いて、実際に不動産会社を選んで家を売却していくわけですが、自身の家を売ってもらうためには不動産会社と媒介契約を結ぶことになります。

媒介契約には

  • 専任媒介契約
  • 専属専任媒介契約
  • 一般媒介契約

の3つがあり、それぞれにメリットとデメリットがあるため、それを理解したうえで契約を結ぶ必要があります。

ここでは、簡単に3つの媒介契約について紹介させていただきます。

専属専任媒介契約の特徴

3つの媒介契約の中では最も制限の厳しいものになり、 売り手は選んだ不動産会社を通さなければ売却予定の物件を売ることができません

例え売り手が自分で見つけてきた購入希望者であったとしても、契約をした不動産会社を通さなければ売買ができないため、仲介手数料を支払わなければなりません。

しかし、その分不動産会社もきちんと売却活動を行ってくれますし、毎週のようにその活動内容を報告してくれるため安心です。

専任媒介契約の特徴

上記の専属専任媒介契約と似たようなものですが、 大きな違いは売り手が自分で探してきた購入希望者と直接売買取引を行うことができるという点です

その代わり、不動産会社からの活動内容報告が2週間に1度になるといったデメリットも出てきます。

しかし、一般契約と比べるとやはり不動産会社は売却活動をしっかりと行ってくれる傾向にあります。

一般媒介契約の特徴

こちらは上記の2つとは大きく異なり、 同時に複数の不動産会社と契約を結ぶことが可能となります

自由度が最も高く使い勝手が良いと思われがちですが、この契約を結ぶと不動産会社からの販売状況の報告がなくなってしまうため、進捗状況を把握しにくいと言ったデメリットもあります。

また、時間や経費を使って宣伝をしても他社を通して売却されてしまっては利益を得ることができないため、上記の2つと比べると不動産会社の売却活動が消極的になりがちです。

媒介契約については、下記を参照していただければと思います。

⇒家を売却する際に必要な媒介契約の種類とそれぞれの特徴を徹底比較!

4.内覧について

不動産会社と媒介契約を結んだら、購入を考えている方々が内覧をすることになりますが、内覧に来られる方の購入意欲をそそるために、様々な対策をしておくとよいでしょう。

他にもすべき点はたくさんありますが、内覧の前にしておくべき基本事項を紹介させていただきます。

明るい時間帯がおすすめ

内覧に対応する際の基本として、来てもらうのはできるだけ明るい時間帯の方が良いというものが挙げられます。

例えばエクステリアの照明に凝っていて、是非夜間の照明を見てほしいという場合は話が変わってくるかもしれませんが、通常は明るい時間帯に明るい室内を見てもらった方が良いはずです。

逆に、室内が暗いとどうしても印象が悪くなってしまうため、暗くなってから内覧の対応をする場合は、照明をできるだけ明るいものに変えておくなどの対策が必要になってきます。

特に、玄関や廊下部分などはどうしても暗くなりがちなので、なるべく明るくして良いイメージを与えましょう

事前に建物をきれいにしておく

当たり前のことかもしれませんが、汚れの激しい住宅を見て良い印象を持つ方はいらっしゃらないはずです。

もちろん老朽化した住宅の中には、どうしようもない汚れなどもあるかもしれませんが、少なくとも整理整頓をきちんとして小ぎれいな印象を与えたほうが良いでしょう。

また、見た目だけではなく、臭いや温度の設定も重要になってきます。

特にタバコを室内で吸っていた場合やペットを飼っているという場合は、建物に家族にしかわからない臭いが付着していることも考えられますので、快適な温度を維持するのとともに消臭対策を心がけましょう。

物件の情報を把握しておく

内覧希望者は、高いお金を払ってその建物を買おうとしているわけですから、当然その建物についての情報もいろいろ知りたいはずです。

築年数や大きさなどの基本情報だけではなく、建物のどの部分が傷んでいるかというマイナスの情報もしっかりと伝えておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。

また、 隣人や周りの雰囲気、環境などの情報も、わかる範囲で押さえておくことで、内覧者の質問に的確に答えることができるはずです

5.売買について

内覧者が最終的に購入を決断したら、不動産会社を仲介して売買契約を結ぶことになります。

それでは、売買契約ではどのようなことに気を付ければよいのでしょうか。

契約に必要なアイテム

もちろん不動産会社の担当者が全てサポートしてくれるはずですが、ご自身でも必要なアイテムを把握しておきましょう。

  • 本人確認書類
  • 実印
  • 印鑑証明書
  • 固定資産税納税通知書
  • 固定資産税評価証明書
  • 土地測量図
  • 境界確認書
  • 建築確認通知書
  • 登記済権利書
  • 印紙代
  • 仲介手数料

場合によっては他にも必要な書類が出てくるかもしれませんが、最低でもこれだけは用意しておく必要があります。

売買契約に必要な日数

購入希望者から家を買いたいという申し出があったら、その日のうちにその家を引き渡すことができるというわけではありません。

まずは値引き交渉などから始まるでしょうし、正式な引き渡し日の設定などを一緒に話し合うことになります。

また、売買契約書を売却が決まってから作成する不動産会社も少なくありませんので、それにも時間が必要になってきます。

一般的には、購入希望者が決まり正式に契約を結ぶまでには2週間程度かかることが多いようです

6.家の引き渡しについて

売買契約が終わったら、いよいよ対象となる建物を購入希望者に引き渡すことになります。

それでは、引き渡しの当日や引き渡し後はどのような流れで家を手放すことになるのでしょうか。

引き渡し日当日の動き

様々なパターンが考えられますが、一般的には住宅ローンの融資を受けたり大金の受け渡しなどがあるケースが多いため、銀行で引き渡しを行うことが多いです。

銀行に関係者が集まって、司法書士により不動産登記関係の書類が確認されることになります。

そして、その登記申請書にサインと押印をして正式に引き渡しが完了します。

引き渡し後の注意点

無事に引き渡しが完了したら、これで家の売却が完了したということになります。

しかし、場合によっては売却後しばらく経ってから、 買い手の方から欠陥が見つかったなどの連絡が入る可能性もあります。

瑕疵担保責任によって、例え売却が完了していたとしても売り手がその欠陥に対して責任を負う必要があるため、まずはその瑕疵担保責任の期間を確認し、欠陥に対する補償をしなければなりません。

逆に、瑕疵担保責任の期間が過ぎているのであれば、完全に建物の売却が完了したということになります。

最後に

住宅の査定前の動きから、売却後までの大体の流れをつかむことができたのではないでしょうか。

文章にすると一瞬で終わってしまいますが、実際には最初のステップから売却完了までには長い期間が必要になってきます。

また、なかなか家が売れない、利用した不動産会社がよくなかった、などのトラブルが発生することがあるかもしれません。

もちろん売却活動に専念できるという方もいらっしゃるかもしれませんが、普段の生活を続けながら家を売りに出す方が大半だと思います。

しかし、基本的な流れを押さえておけば今すべきことが的確にわかると思いますので、ご自身が今どの段階にいるのかを考えながら売却活動を続けていくようにしましょう。