不動産を買ったら忘れたころに結構な金額の納付書が届く「不動産取得税」。

契約、決済のときに不動産屋さんから聞いていたけど購入の後に請求が来ることで感覚的な負担が大きいものです。

この不動産取得税、不動産を買った金額に対して固定した税率で必ず来ると思い込んでいる人が結構いらっしゃるのですが実はそんなことはありません。

どのような不動産を買うか、買った時に不動産にどう手を加えるかで実は大幅な減税があるのです。

この記事ではあまり広くは知られていない不動産取得税の減税について説明することで、これから不動産を買おうと考える人の負担を軽減する手伝いをしたいと思います。

参考にしてみてくさい。

そもそも不動産取得税ってなんだ?

不動産取得税とは

「不動産登記のある地域を管轄する自治体(都道府県)が固定資産の所有権移転事実に対し移転した所有者から1度だけ徴収する普通税です。」

ざっくり箇条に分けた項目について次に詳しく説明します。

課税要件

課税要件の用語の内容については、こちらの記事で詳しく解説していますが、

固定資産税とは?おトクに減税する方法と知っておきたい評価額の基準

ここでは不動産取得税に当てはめた説明を順に行います。

課税団体

不動産取得税の課税団体は、地域を管轄する都道府県になります。

主に各地の都道府県税事務所で扱われていることが多いようです。

納税主体

納税義務者は、移転登記をして不動産を手に入れた新所有者になります。

課税対象

不動産取得税の課税対象は土地・家屋になりますが、新規・承継や購入物件の一部・全部など手に入れたパターンの多くに対して課税されるようになっています。

自動車に例えてみれば新車購入のように、新築や開発などもともとそこになかったものを最初に取得することを、税の用語で「原始取得」と言います。

原始取得

原始取得による不動産の取得には

  • 埋め立て等で新たに生まれた土地
  • 家屋の増改築によって新たに作られた部分
  • 改築によって増加した家屋の評価額分
  • 取得時効による所有権の取得

が含まれます。

これに対してもともと登記のある土地家屋を譲り受けることを「承継取得」と言います。

承継取得

承継取得による不動産の取得には、土地・家屋の

  • 売買
  • 交換
  • 贈与
  • 相続などの財産分与

が含まれます。

課税標準

不動産取得税の課税標準は、原則的に「取得時における不動産の適正な時価」とされており、実際の売買価格や工事価格ではありません。

市町村の固定資産台帳に価格が登録されている物件に関してはその価格で、台帳に登録されていない、または増改築や地目変更で現在登録されている価格が妥当ではないと判断されるときには、固定資産評価基準に沿って評価されます。

不動産取得税の課税標準には、固定資産税評価額が用いられることが多いようです。

税率

不動産取得税の標準税率は4%です。ただし不動産取得税については減税のチャンスが多くあるので、のちに詳しく説明をします。

徴収のタイミング

登記が終了してからおおむね6カ月前後で納付書が納税義務者に届きます。購入からだいたい1年以内が納付期限であるというのが捉え方として正しいでしょう。

不動産は減税でお得に買える

空き家問題や住宅ストックの長寿命化、既存住宅の耐震化など。

国策として取り組んでいる住宅関連の諸問題を解決する支援策として、住宅関連の税金はいま減税チャンスでいっぱいです。

ここでは不動産取得税の減税について詳しく説明します。

不動産の用途による生産性の違い

筆者は生活の用に供する不動産に生産性がないと考えています。

これは居住用の不動産の中で、自分が生活のために使用するものには、お金を生む要素がなく、あるのは支出だけであるという意味で、生活に使う居住用不動産に値打ちがないと言っているわけではありません。

誰しも無尽蔵に所得があるわけではないので、日常生活にかかるコストは出来るだけ抑えたいものです。

こうした考え方は行政側としても理解していて、費用対効果を生まない不動産に対しては従来から特例があります。

従来からある不動産取得時の特例

住宅の床面積が50~240㎡の新築住宅で、自らの居住用・賃貸・親族を住まわせる目的の物件は、評価額から1,200万円の控除ができます。

個人が自分で住むために購入した既存住宅で、住宅の床面積が50~240㎡の築20年以内(耐火建築物の場合は築25年以内)のものは、新築年度に応じた評価額の控除を受けることができます。

従来の減税は、主に新築もしくは築年数の浅い物件にのみ適用できるもので、古い中古住宅に適用できるものはなく、お得感の強い新築に押されたり、人口減や都市集中のあおりで問題になっている空き家は増える一方です。

中古住宅でも条件がそろえば減税が受けられる

そのような社会問題を踏まえ、築20年超の中古住宅に国策のスポットライトが当たっています。

減税の条件

具体的には築20年以上の建物でも、

・建築士による耐震診断(ホームインスペクション)の結果、新耐震基準(昭和56年6月1日)に適合している物件。

・耐震基準に適合しない物件の中で、ホームインスペクションに沿った耐震計画に基づく耐震化工事をした物件

これらの物件については、従来の新築や新耐震適合物件と同じ減税を受けることができます。

古家・廃墟にもお得感が生まれる

この減税・控除の措置は不動産取得税だけでなく、固定資産税や所得税の計算をするときに使える住宅ローン控除にも及びます。

今までなかった古い住宅に対するお得要件を広げることで古い住宅の流通を促すことで、空き家対策や産業廃棄物の減少、観光立国や地域創生に繋ぎたいというのが国の狙いです。

但し適合証明やインスペクションに伴う耐震改修を要件にするためには、まだルートが未整備なところもあり、宅建業者であってもその説明や提案をきちんとできる人は少ないのが現状です。

減税できる中古不動産と減税できるタイミング

まず減税できる中古不動産から。

減税できる中古不動産

古民家もアリ

耐震基準に適合することで、中古不動産ならどの物件でも、減税を受けることは可能です。そのため築年数が100年を超えるような古民家を改修してゲストハウスなどに利用、外国人観光客に好評を博している例もあります。

旧耐震時代でも基準の上をいく優秀な仕様の住宅がある

また、過去に構造認定を受けているプレハブ住宅などの中には、昭和56年6月以前の製品であっても当時の書類がそろっていることで適合証明を受けることができる古い住宅もあります。

またこのような住宅は、書類がそろっていない場合でも軽微な補修をすることで耐震基準適合証明書を発行することができ、非常に低コストで現在の基準を満たすことができる優秀な中古住宅であると言えます。

基礎の評点が取れない場合はかえって高くついてしまうことも

ただし耐震基準の適合を審査する構造評点には、基礎と上物に関するものがあり、基礎が評点に達しない場合はかなり高額な改修費用が掛かり、場合によっては新築より高くつくことも考えられます。

現実的には基礎の状態がある一定の基準以上の物件であることがお得条件であると言えるでしょう。

次にまだ未整備であるがゆえに難しい、減税が出来るタイミングについて説明します。

減税できるタイミング

中古住宅の売買に伴う耐震基準適合証明書は、売主名義で発行されている必要があります。つまり今現在は、耐震基準を満たした中古住宅を買うときにしか減税ができません。

現状売主に負担を強いるケースが多い

つまり売主があらかじめ売却を前提として手出しでホームインスペクション・耐震改修・適合証明書発行をしておく必要があるということです。

不動産を売却する売主の事情を考えると、売る前に大きな自己負担を強いることはなかなか難しいのが現実ですし、補助制度の多くは半年以上の期間を要するため、なかなか熱が上がりません。

買主サイドで進めるには手続きが煩雑&時間がない

もしくは買主側でも、耐震基準適合証明の仮申請を行うことで売買契約から引渡しの間に対策をすることで減税の恩恵にあずかることはできます。

しかし方法として診断の際には前所有者の所有物である状態なので、売主の協力が不可欠であることや、書類的にもかなり複雑な手続きが必要で、どうしても理解が得にくいうえ、進められるとしてもバタバタしてしまいます。

しかし不動産取得税の減税は、正直馬鹿にできないくらい巨額です。

取得税の減税は大きい

不動産取得税の標準税率は4%です。仮に評価額2,000万円の物件を購入するとその取得税額は80万円にもなります。

仮に1,200万円の控除を受けると、

  • 1,200万円×4%=48万円

こんな大きな金額を一撃で得することになります。

48万円の節約って、普通に生活していてなかなかできるものではありませんよね。それが1回の買い物で浮いてしまうのですから、不動産にかかるコストの節約にはものすごい破壊力があることはわかっていただけるでしょう。

さいごに

中古住宅をインスペクションし、必要な耐震改修を施してお得な物件にする。これらに伴う法整備はまだまだ議論の最中であり、実際に使うにあたっては困難な問題が不動産取引の現場でたくさん起こっています。

地方自治体も国策にならい、補助金や貸付制度など独自の支援制度を打ち出していますが、どうしても民間に受け入れられるタイミングではなく、せっかくあるのに使えない制度であることが多いのが現状です。

筆者は従来不動産活用による地方創生に魅力を感じ、執筆を通じ田舎の中古不動産を活用する方法について説いています。

この辺の制度がもっとわかりやすく、身近になることでもっとうなぎ上りに中古住宅の流通は伸びると信じています。

不動産流通に関わる業務を日々こなすプロの皆さんにも、この辺りは重点的に勉強していただき積極的に現場に取り入れていくことで、不動産流通にかかわるすべての人が豊かでお得な不動産ライフを送れることを、願っています。